新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるため、事業者は時短営業やリモートワーク、休業などさまざまな対策を施しながら事業活動を続けています。
しかし、これまでのビジネスモデルの継続では経営を続けることが難しく、悩んでいる事業者も少なくありません。
日本政策金融公庫が管理運営している「中小企業経営力強化資金」は、中小企業や小規模事業者向けの支援制度で、低金利で借り入れることができます。
中小企業経営力強化資金とは?どのような事業者におすすめ?
中小企業経営力強化資金は、日本政策金融公庫が管理運営している融資制度の1つです。
中小企業と小規模事業者は融資を受けることができ、設備投資や運転資金などに活用できます。
主な特徴は、融資の手続きや返済の負担を軽減している点です。具体的には、以下の特徴があります。
主な特徴
・無担保、無保証で申請可能
・申請要件に自己資金に関する条件なし
・低金利
事業資金を調達したいと考えているけれど、金利負担や担保などといった点で悩んでいる事業者にもメリットがあります。
こんな事業者におすすめ!
・業界で考えられたことのなかった商品の開発
・開業資金を集めている
・新サービスのために運転資金や設備投資用の資金が必要
このように新規事業の準備やこれまでにない商品・サービスの開発や販売に対して活用できるのも特徴の1つです。
なお、市場の創出・開拓を行おうとする人を対象としているので、フランチャイズを始めるための資金調達には活用できません。
中小企業経営力強化資金の対象事業者は2種類?
中小企業経営量強化資金には、「国民生活事業」と「中小企業事業」の2種類に分かれています。
簡単に説明しますと、「国民生活事業」は小規模事業者向けの融資制度で、「中小企業事業」は文字通り中小企業向けの融資です。
それぞれ共通点もありますが、異なる要件もあるので気を付けてください。まず、各制度を利用できる事業者の要件は、以下の通りです。
【国民生活事業】
1と2いずれか1つに該当する事業者は、中小企業経営力強化資金を利用することができます。
1 | 次のすべてに該当していること
・経営革新もしくは異分野の中小企業と連携した新事業分野の開拓などによって市場の創出・開拓(新規開業を行う場合を含む)を行おうとしている事業者 例:飲食業界でこれまでに取り扱っていない商品を提供したり、これから新規開業したりする方
・融資を受ける方が事業計画を策定し、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関から指導および助言を受けている
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2 | 次のすべてに該当する方
・「中小企業の会計に関する基本要領」もしくは「中小企業の会計に関する指針」を適用している、もしくは適用する予定であること ・事業計画書を策定している |
参考URL:中小企業経営力強化資金|日本政策金融公庫 (jfc.go.jp)
上記1と2いずれかの場合でも事業計画書を作成するのは基本で、同書類に日本政策金融公庫と認定支援機関の押印が必要です。
【中小企業事業】
中小企業事業も、1と2いずれか1つに該当していれば中小企業経営力強化資金を利用できます。
また、事業計画書の作成と認定支援機関からの押印といった点も共通しています。
1 | 次のすべてに当てはまる方
・経営革新もしくは異分野の中小企業と連携した新事業分野の開拓などによって市場の創出・開拓(新規開業を行う場合を含む)を行おうとしている事業者
・融資を受ける方が事業計画書を策定し、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関から指導および助言を受けている |
2 | 次のすべてに当てはまる方
・「中小企業の会計に関する基本要領」もしくは「中小企業の会計に関する指針」を適用している、もしくは適用する予定であること ・事業計画書を策定している |
参考URL:中小企業経営力強化資金|日本政策金融公庫 (jfc.go.jp)
利率や返済期間、資金の用途
中小企業経営力強化資金のメリットでもあるのが、低金利という点です。
基準利率は1.11%で、特定の要件に該当している事業者は1%未満で借り入れることができます。
以下に基準利率と返済期間、資金の用途に関する要件をまとめました。
【国民生活事業】
利率 | 1.11%~1.30%(11年超え12年以内まで1.11%)
特別利率A |
融資限度額 | 7,200万円(うち運転資金に活用できるのは4,800万円) |
返済期間 | ・設備資金:20年以内(うち据置期間2年以内)
・運転資金:7年以内(うち据置期間2年以内) |
資金の用途 | 事業計画の実施に必要な設備資金および運転資金 |
参考URL:中小企業経営力強化資金|日本政策金融公庫 (jfc.go.jp)
中小企業経営力強化資金を利用できる事業者のうち、前段で紹介した利用対象事業者の1に該当し、なおかつ以下の要件も当てはまる場合は特別利率Aになります。
特別利率Aは複数あるため、相談時に正確な適用利率を確認するのがおすすめです。
・「中小企業の会計に関する基本要領」もしくは「中小企業の会計に関する指針」を適用している方、もしくは適用する予定のある事業者
・「当面6ヵ月程度の資金繰り予定表」および「部門別収支状況表」を含んだ事業計画書を作成している
なお、利用対象事業者の1とは、以下のことです。
次のすべてに当てはまる方
・経営革新もしくは異分野の中小企業と連携した新事業分野の開拓などによって市場の創出・開拓(新規開業を行う場合を含む)を行おうとしている事業者
・融資を受ける方が事業計画書を策定し、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関から指導および助言を受けている
【中小企業事業】
利率 | 1.11%~1.30%(11年超え12年以内まで1.11%)
・特別利率1 |
融資限度額 | 7億2,000万円(うち運転資金2億5,000万円) |
返済期間 | ・設備資金:20年以内(うち据置期間2年以内)
・運転資金:7年以内(うち据置期間2年以内) |
資金の用途 | 事業計画の実施に必要な設備資金および運転資金 |
参考URL:中小企業経営力強化資金|日本政策金融公庫 (jfc.go.jp)
中小企業事業は、前段で紹介した利用対象事業者の1に該当し、なおかつ以下の要件も当てはまる場合は融資額2億7,000万円まで利率を低減できます。(特別利率1)
・「中小企業の会計に関する基本要領」もしくは「中小企業の会計に関する指針」を完全に適用している、もしくは適用する予定の事業者
・「当面6ヵ月程度の資金繰り予定表」および「部門別収支状況表」を含んだ事業計画書を作成している
基準利率と特別利率1
基準利率と特別利率1は、返済期間に応じてそれぞれ利率が変わります。
【基準利率】
・11年以内:1.11%
・11年超え12年以内:1.12%
・12年超え13年以内:1.14%
・13年超え14年以内:1.15%
・14年超え15年以内:1.17%
・15年超え16年以内:1.19%
・16年超え20年以内:1.30%
※2021年1月21日時点
【特別利率1】
・11年以内:0.71%
・11年超え12年以内:0.72%
・12年超え13年以内:0.74%
・13年超え14年以内:0.75%
・14年超え15年以内:0.77%
・15年超え16年以内:0.79%
・16年超え20年以内:0.90%
※2021年1月21日時点
中小企業経営力強化資金は担保や保証人制度がない?
中小企業経営力強化資金に関しては、担保不要で融資の相談ができます。
さらに自己資金の要件はありませんので、資金力で悩んでいる事業者にも利用しやすい制度です。
保証人および代表保証人も不要ですが、一定の要件に当てはまる場合は経営者責任者による個人補償は必要となります。
中小企業経営力強化資金の申請方法とは?
中小企業経営力強化資金を利用するためには、まず認定支援機関へ相談します。
認定支援機関は、中小企業庁が定めていて士業や中小企業団体などで対応しています。
認定支援機関は、中小企業経営力強化資金の手続き全般をサポートしているので、不明点などがあれば適宜相談するのが大切です。
認定支援機関へ相談した後は、申請書類を準備します。申請に必要な書類は、大きく分けて2~3種類です。
申請に必要な書類
・事業計画書
・創業計画書(新規事業立ち上げの場合に必要)
・借入計画書
その他には、同意書や会社概要を示した書類、印鑑証明書、不動産の賃貸借契約書、運転免許証のコピー、水道光熱費の支払いを示す証明書類なども日本政策金融公庫へ提出します。
申請書類の詳細については、日本政策金融公庫のWebサイトでは詳細に記載していないため、認定支援機関で1点ずつ確認する必要があります。
なお、借入計画書と創業計画書、その他いくつかのテンプレートは、日本政策金融公庫「国民生活事業」「中小企業事業」ページからダウンロード可能です。
申請の流れ
- 認定支援機関へ相談
- 認定支援機関のサポートを受けながら事業計画書やその他提出書類の準備
- 各種書類を日本政策金融公庫へ提出
- 日本政策金融公庫の支店で面談
- 日本政策金融公庫の担当者が現地調査
- 審査
- 融資の決定に関する通知が届く
- 借入金の振込み
- 返済開始
書類提出後は、日本政策金融公庫の支店へ来店し面談を行ったり、現地調査を受けたりした上で審査に入ります。
無事審査に通過できた場合は、審査の通過に関する通知が日本政策金融公庫から郵送されます。
そして、通知後数日程度で指定口座へ借入金が振り込まれます。
設備投資や事業の新規立ち上げに活用できる!中小企業経営力強化資金の申請書類は複数あるため注意!
新型コロナウイルスの感染拡大が続いたことで、生活様式やサービスの構造などが大きく変わりました。
事業者は、リモートワークなど新しいニーズや生活様式に合わせて、ビジネスモデルを転換する必要もあり、そのためには運転資金も準備しなければいけません。
中小企業経営力強化資金は、低金利・無担保で融資を受けることができる制度です。
新規事業の立ち上げや新サービスの開発を考えている中小企業・小規模事業者は、検討してみてはいかがでしょうか。