事業再構築補助金とは? 一般枠の申請時期や申請方法など解説

事業再構築補助金
事業再構築補助金
事業再構築補助金イメージ

 

新型コロナウイルス感染症の影響により、中小企業や個人事業主は特に大きな影響を受けました。

そんな中、中小企業庁から発表されたのが「事業再構築補助金」です。

その対象はどんな企業で、いくらの補助金が出るものなのでしょうか。

この記事では、その定義から対象者、補助金の金額などをわかりやすく解説していきます。

 

第1章 事業再構築補助金とは?

事業再構築補助金は、新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、事業再編の5項目に分かれています。

これらの補助金はそれぞれどういった企業向けで、申請するためにはどういった条件を満たすべきなのでしょうか。

 

第1節 新分野展開

新分野展開は「主たる業種又は主たる事業を変更することなく、新たな製品等を製造等し、新たな市場に進出すること」と定義されています。

また、新分野展開で助成金を受けるには、「売上高10%要件」も満たす必要があります。

つまり、新分野展開において助成金を受け取るには以下の条件を満たしていなければならないのです。

 

  • 製品等の新規性要件
    ……日本標準産業分類における大分類の産業を変更せずに新しい製品等を製造等する
  • 市場の新規性要件
    ……新たな市場に進出する
  • 売上高10%要件
    ……3~5年間の事業計画期間が終了した後、新たな製品が総売り上げの10%以上を占める計画が策定されている

 

新分野展開は例えば「コロナ前は航空機部品を製造していた企業が、既存事業の一部において関連設備を廃棄し、医療機器部品製造事業を立ち上げる。3年間の事業計画期間の後は、医療機器部品製造事業が総売り上げの10%以上になるよう運営する」といったケースに適用されます。

 

第2節 事業転換

事業転換は「新たな製品等を製造等することにより、主たる業種を変更することなく、主たる事業を変更すること」と定義されています。

例えば、日本料理店が焼き肉店を開業する、という場合(飲食店という業種はそのままに日本料理から焼き肉へ事業を転換する場合)はこのケースに当てはまります。

また、この「事業転換」で補助金を受けるには、以下の要件を全て満たす必要があります。

 

  • 製品等の新規性要件
    ……新たな製品等を製造等すること
  • 市場の新規性要件
    ……新たな市場に進出すること
  • 売上高構成比要件
    ……3~5年の事業計画期間終了後、新たな製品等の属する事業が売り上げ構成比の最も高い事業となる計画を策定すること

 

つまり、上記の日本料理店で言えば事業の転換に加えて「3年間の事業計画期間終了時に焼肉事業の売り上げ構成比が最も高い事業となる計画」を策定すれば、事業再構築補助金を受ける条件を満たせます。

 

 

第3節 業種転換

業種転換は「新たな製品等を製造することにより、主たる業種を変更すること」と定義されています。上記の事業転換と異なり、業種を変える必要がある枠組みです。この条件に該当するには、以下の条件を満たす必要があります。

 

  • 製品等の新規性要件
    ……新たな製品等を製造等する
  • 市場の新規性要件
    ……新たな市場に進出する
  • 売上高構成比要件
    ……3~5年の事業計画期間終了後、新たな製品の属する業種が、売上高構成比の最も高い業種となる計画を策定する

例えば「レンタカー事業を営む事業者が、コロナ対策に配慮した貸し切りペンションの経営を開始。

レンタカー事業と組み合わせた宿泊プランを提供することで、3年後の事業計画期間終了後には貸し切りペンションの売り上げ構成比がもっとも高くなる計画を策定した」といったケースなどが該当します。

 

 

第4節 業態転換

業種転換は「製品等の製造方法等を相当程度変更すること」と定義されています。

この条件に該当するためには以下の3項目を満たす必要があります。

 

  • 「製造方法の新規性要件」
    ……製品等の製造方法等が新規性を有する
  • 以下のどちらかに該当する
    「製品の新規性要件」(製造方法の変更の場合)……新たな方法で製造される製品が新規性を有するものである
    「設備撤去等又はデジタル活用要件」(提供方法の変更の場合)……既存の設備の撤去や既存の店舗の縮小等を伴うもの又は非対面化、無人化・省人化、自動化、最適化等に資するデジタル技術の活用を伴うものである
  • 「売上高10%要件」
    ……3~5年間の事業計画期間終了後、新たな製品等の製造方法等による売上高が、総売上高の10%以上を占める計画を策定する

 

つまり、

  • 過去に同じ方法で製造等していた実績がない
  • 新たな製造方法等に用いる主要な設備を変更する
  • 競合他社の多くが用いている製造方法等ではなく、定量的に性能や効能が異なること

これら全てを満たす必要があります。

 

例えば「ヨガ教室の経営をしていたが売り上げの低迷を請け、店舗での営業を縮小、オンライン専用のヨガ教室を新たに開始。その3年間の事業計画期間終了後、総売り上げの10%以上をオンライン専用ヨガ教室が占めているという計画を策定」というケースなどが該当します。

 

 

第5節 事業再編

事業再編は「会社法上の組織再編行為等を行い、新たな事業形態のもとに、新分野展開、事業転換、業種転換又は業態転換のいずれかを行うこと」と定義されています。

この枠で助成金を受けるためには、下記にある両方の条件を満たす必要があります。

 

  • 組織再編要件
    ……会社法上の組織再編行為等を行う必要がある
  • その他の事業再構築要件
    ……その他の事業再構築のいずれかの類型(新分野展開、事業転換、業種転換または業態転換)の要件を満たす

 

 

第2章 事業再構築補助金の対象者・助成金の金額は?

事業再構築補助金の対象となるものは上記の通りですが、誰でも補助金を受けられるわけではありません。

申請の条件・助成金の金額などを紹介します。

 

第6節 申請に必要な条件とは?

この補助金は、コロナの影響で厳しい状況に立たされた中小企業、中堅企業、個人事業主を対象としています。そのため、申請を行うには

 

  • 売り上げがコロナ以前と比較して減少している(申請前直近6か月のうち任意の3か月間と2019又は2020年1~3月の3か月を比較)
  • 事業再構築に取り組む(新分野展開、業態転換、事業・業種転換等)
  • 認定経営革新等支援機関とともに、事業計画を策定する

 

という条件を満たしていなければなりません。

 

第7節 予算額、補助額、補助率はどれくらい?

事業再構築補助金は、1兆1485億円の予算が計上されています。

補助額は以下の通りで、いずれも100万円以上の補助額が設定されています。

補助額 補助率
中小企業 100万円~6000万円 2/3
中堅企業 100万円~8000万円 1/2

 

また、中小企業・中堅企業の範囲は以下の通りに規定されています。

当てはまるかどうか、チェックしておきましょう。

分野 範囲
製造業その他 資本金3億円以下の会社または従業員300人以下の会社及び個人
卸売業 資本金1億円以下の会社または従業員100人以下の会社及び個人
小売業 資本金5000万円以下の会社または従業員50人以下の会社及び個人
サービス業 資本金5000万円以下の会社または従業員100人以下の会社及び個人
中堅企業 中小企業の範囲に入らない会社のうち、資本金10億円未満の会社

 

しかし、上記に当てはまっても補助金の対象とならないケースもあります。それが以下の項目に該当する場合です。

 

  1. 発行済株式の総数又は出資価格の総額の2分の1以上を同一の大企業が所有している中小企業者
  2. 発行済株式の総数又は出資価格の総額の3分の2以上を大企業が所有している中小企業者
  3. 大企業の役員又は職員を兼ねている者が役員総数の2分の1以上を占めている中小企業者
  4. 発行済株式の総数又は出資価格の総額を(1)~(3)に該当する中小企業者が所有している中小企業者
  5. (1)~(3)に該当する中小企業者の役員又は職員を兼ねている者が役員総数の全てを占めている中小企業者。

 

1~5は「みなし大企業」とされ、今回の補助金の対象にはなりません。また、

 

  1. 応募申請時点において、確定している(申告済みの)直近過去3年分の各年又は各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業者

 

6のケースは、中堅企業という区分になり、補助金の対象となります。

 

第8節 何に使うお金なら補助してもらえる?

事業再構築補助金で補助してもらえるのは、設備投資の資金です。そのため設備費、建物の建設費、建物改修費、撤去費、システム購入費などが補助の対象となります。また新事業の開始に伴う研修費や広告宣伝費、販売促進費なども補助対象です。

しかしあくまでも設備投資に対する補助金のため、人件費や旅費、車両の購入費などは対象に含まれません。

 

第9節 事業計画の策定はどうやって作成する?

事業計画は、認定経営革新等支援機関と相談しつつ策定していきます。

審査に通り補助金を受けるためには、合理的で説得力のある事業計画書を作成することが重要です。

認定経営革新等支援機関とは、中小企業を支援できる機関として経済産業大臣が認定した機関を指します。

全国で3万以上の金融機関、支援団体、税理士、中小企業診断士等が認定を受けています。

中小企業庁のホームページから検索し、身近な支援機関に相談をしましょう。

 

第3章 補助金支払いまでの流れ

それでは実際に補助金はどのようにして支払われるのでしょうか。その大まかな流れを見ていきましょう。

 

第10節 大まかな流れ

補助金は前もって支払われるわけではありません。事業者によって設備の料金を支払ったあとに、その使途を確認して補助金が支払われます。一旦は全額補助金なしで支払う必要があるため、注意が必要です。

また5年のフォローアップ期間が終わると、経営状況についての年次報告の義務が発生します。

 

第11節 事前着手承認制度

通常は審査が通ったのち、購入したものに対して補助金が支払われます。

しかし事前着手承認制度においては2月15日以降の設備の購入契約等が補助対象となりえます。

つまり、令和3年3月に開始予定の公募より前(令和3年2月15日まで)にさかのぼり、設備の購入契約などが補助対象とできるのです。

ただし、申請が採択されなかった場合には補助金は出ないため、「助成金が出ると思って設備を購入してしまったのに、採択されなかった」といったことが無いよう注意が必要です。

 

第4章 申請時期や必要な書類

事業再構築補助金に申請するための期間や書類は、公募要領によって規定されています。

それぞれ確認していきましょう。

 

第12節 申請時期について

第二回の申請時期については、以下の通りに決定されました。

 

  • 公募開始:令和3年5月17日週
  • 申請受付:令和3年5月17日予定
  • 応募締切:令和3年7月末予定

 

この期間内にきちんと申請を済ませられるよう、準備しておくことが必要です。

申請は全て電子申請で行われ、GビズIDプライムアカウントが必要になります。このアカウントの取得には2~3週間程度を要するため、公募が始まってから申請を行おうとすると間に合わない可能性があります。事前に準備をしておくのがおすすめです。

 

第13節 必要な書類について

一般枠の申請において必要な書類には、以下のものがあります。

 

  1. 事業計画書
  2. 認定経営革新等支援機関・金融機関による確認書
  3. コロナ以前に比べて売上高が減少したことを示す書類
    (申請前の直近6か月のうち、任意の3か月の合計売上高と、コロナ以前の同3か月の合計売上高が確認できる資料)
  4. 決算書
    (直近2年間の貸借対照表、損益計算書、製造原価報告書、販売管理費明細、個別注記表)
  5. ミサラボplus「活動レポート(ローカルベンチマーク)」の事業財務情報
  6. 審査における加点を希望する場合に必要な追加書類

 

認定経営革新等支援機関と相談し策定したり、事前に書類を集める必要があったりして、全てを揃えるのには時間がかかります。

早めに準備に取りかかるようにしましょう。

 

まとめ

中小企業の事業再編成を支援する事業再構築補助金は、新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、事業再編と5つに項目が分かれています。

条件も少々複雑ですが、助成を受けられれば大きな支援となります。

関係機関と相談の上申請をして、企業運営に活用しましょう。